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「そうだよなぁ、暗い方が手も繋げるし?他のことだって?」
「はあ⁈何言ってんだよ!最近の煌太さん、なんかエロオヤジに磨きがかかってきてる気がする…」
「うっわ〜何気に気にしてることをさらっと言っちゃうって、傷つくなぁ」
「だって、本当のことだろ?俺より9歳も年上なんだから!ほら、早く行かないと映画始まる!」
そうやって湊はいつも、俺の愛情表現を意図も容易くスルーしては、猫のようにするりと手の中から抜け出していく。だけど、そう言う時はいつも決まって。
「でも、カッコいいから。めっちゃ」
俺に聞こえるくらいの声で、わざわざ前を歩くその足を止めて、そんなことを言うんだ。
「湊!今日も塩バター味のポップコーンでいいか?」
「うん、それがいい」
俺より茶色の髪の隙間から覗く真っ赤な耳も、いつもより赤く染まった頬も、少し生意気な態度も、俺をエロオヤジと呼ぶことも全部、俺にだけだったらいいのに。
いい歳して情けないけど、俺は湊が思っているよりもかなり、湊にゾッコンなんだ。
だから、湊。
そろそろ、俺にも心を開いてくれないか。
俺は今日も人知れず、言葉にできない願いをその細い後ろ姿にただ、祈ることしか出来なかった。
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