気が付かないフリなら、喜んで。

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気が付かないフリなら、喜んで。

湊の異変に気がついたのは、俺が泊まりがけの研修から戻ってきて1週間が過ぎたあたりだった。 「あれ、湊?今日もまだ帰ってないのか」 俺は交番勤め、湊は保育園勤め。 お互いに不規則な勤務ではあるが、俺が夜勤明けや早番以外の時は、湊が家にいて俺を出迎えてくれる。 それが俺たちの日常だったはずなのだが、ここ1週間ほど、湊が駆け寄ってくる姿をずっと見ていない。 最初の二日間くらいは、湊も社会人の付き合いとか友人の付き合いとかあるだろうって楽観的に考えてはいたし、湊からも『ごめん、しばらくは遅くなるから夕飯先に食べてて』とメールも入っていたから俺もすっかり安心しきっていた。 だが、そのしばらくがまさか、1週間にもなるとそう安心してもいられない。 ようやく帰ってきたかと思えば、夜の10時とか遅い時は11時近いし、朝だって早番でもないはずなのに随分と早くに出るようになっていた。 まさしく、すれ違い生活そのもので、俺は多分、そんな状況にやきもきしていた。 「湊、おかえり」 「煌太さん⁈もう寝てたと思ってたのに。ただいま」 湊とすれ違い始めて今日で1週間。 湊不足で我慢の限界だった俺は、歳のせいで休みたがる重い身体を熱いコーヒーで無理矢理目覚めさせて、湊の帰りを待ち構えていた。 「今日も随分と遅いな。何かあったのか?」 「いや、なんでもないよ。ちょっと、(マサル)のところに行ってた」 大とは俺も知っている湊の友人の1人だ。 湊は俺と付き合うようになってからも、よくその大と会っている。 喧嘩した翌日は必ずといっていいほど大の家に居座っているから、湊の説明に疑うところなんてないはずだ。 だけど、ふと、違和感を感じる。 「じゃあどうして、俺の目を見ないんだ?湊」
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