01.

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 昼下がりの住宅街にある小さな公園。大志はベンチに座り、近くのコンビニで買ったコーヒーを飲みながら、タブレット端末を眺める。仕事の打ち合わせの時間までまだ二十分近く。ちょっとした休憩。  夏から秋にかけてのちょうどいい季節。吹き抜ける風が心地よい。大志はコーヒーとタブレット端末をベンチに置き、思わずベンチから立ち上がって、大きく伸びをする。  このままベンチに寝っ転がれば、心地よい昼寝ができそうだ。両腕を大きく伸ばして感じるのは季節の変わり目の風。  そのとき、大志の頭に何かが落ちてきた。頭上では一羽の鳩が羽根を大きく広げて飛び去っていく。いやな予感。大志は恐るおそる自分の頭を触る。  やられた。  鳩が落としたフンが頭に直撃したようだ。  まったくついてないな。もうすぐ打ち合わせだというのに。  大志は慌てて荷物を片付け、公衆トイレの洗面台の鏡で自分の頭をたしかめながら、ポケットティッシュで髪の毛についたフンを丁寧に取り除く。怒りと情けなさが込み上げるのを感じながら。同時に、空を飛ぶ鳩のフンが頭を直撃した偶然に驚きながら。  そんな大志の部屋に鳩が訪れたのは、その日の夜だった。
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