ルミナス

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「あらあら、アナタはどこの子ですか? 僕ちゃん? お嬢ちゃん? オバちゃんにその可愛らしいお顔を見せて頂戴な」  カスタネット色の巨人は、大怪獣の目線の位置に屈み顔を覗き込んで言った。  間を置かず大怪獣のゴリラな腕のフルスイングなウエスタン・ラリアットが赤青巨人の顔面に炸裂した。まるで二千回公演を達成した戯曲「放浪記」の舞台の主演女優の熱演のように、でんぐり返しで転がって飛ばされた巨人は、ダメージも無く立ち上がった。 「あらまあ、元気な悪戯っ子ちゃんなのね。でもそんなオイタしちゃダメですよ」  巨人はそう言いながら両手前腕をクロスさせバッテン印のジェスチャーをした。その時、巨人の全身が燐光し始めた。周囲一帯の空間が歪むようなエネルギーが観測され、駐留軍は我先に撤退した。  光りはカスタネット色の巨人の交差した前腕に集積され唸りと共に放射された。磁場計測器の針は飛び、誰もが広島長崎に匹敵するエクスプロージョンな轟音を連想し、覚悟を決めた。    しかし鳴ったのは...... 「チュル、チュル、チュルル、チュール、チュルチュル」  ......と間の抜けたお茶目な音で、巨人の十字架からは、閃光とは程遠いトロみのある水溶液が放出されていた
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