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例えば、柔道の達人を思い浮かべてみて欲しい。完璧な受け身で技のダメージを軽減しようとした矢先に道場の畳の上に小鳥の雛がいるのを見つけたら彼はどうする? そのままでは自分の背中で小鳥を潰してしまうのが避けられないのならば、手首の骨折も止む無しで先にヒナを掴んで救うだろう。
それに似た状況で、大気圏突入で火球になった大巨人は、山路を独り歩く地球人の婦人を見つけて手を伸ばしてしまった。
けれど熟練の柔道家であったとして、不恰好な形で畳に打ちつけられる際、無意識に全身の筋骨に力を入れ身構えるだろう。結果掴んだ柔らかいヒナを握り潰してしまう。
同じく大巨人に掴まれた婦人は墜落激突の衝撃が伝わって圧死してしまった。
大巨人は自分の掌の上の物言わぬ婦人になんだかとても見覚えがある気がした。かつて自分がこの星の住人だった輪廻転生前の記憶が蘇った。子供の頃に大好きだった、胸に流星のマークをつけた銀光の巨人もこんなシチュエーションに陥った事がある。流星マークの巨人はその時どうしたか?
カスタネット色の巨人も迷わず倣って、自分の肉体を掌の中の消えゆく魂に捧げた。
「目覚めよ。汝、眠るなかれ」
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