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ヘレンはコロちゃんと、コロちゃんの実を食べていました。 「おいしいね」とヘレンが言いました。 「だからおいらが言ったとおりだろ? 食べていいかどうかなんて食べてみればわかるんだ。わざわざ人に聞くようなことじゃないし、人に決めてもらうようなことでもない。この国のえらい人は、みんな狂ってしまったんじゃないか。いや、えらい人だけじゃないかもしれない」 そこへ、槍を持った兵隊さんがたくさんやって来ました。 「おまえら、いったい何をしているか!」兵隊の隊長が言いました。 ヘレンがこたえます。 「コロちゃんの実を食べているんだよ。兵隊さんも、おひとつどうぞ」 ヘレンはコロちゃんの実を隊長に差し出しました。 「なに。お前、この実を食べているのか?」 「うん。とてもおいしいよ」 「食べて、何ともないのか?」 「うん、まいにち食べてるし、パパもママも、村のみんなもコロちゃんの実を食べてるよ」 隊長は混乱しました。はたしてどうしたらよいものか、自分では決められないので、いったん退却して、上司である中隊長の判断をあおぐことにしました。 そして、中隊長は師団長の判断をあおぎ、師団長は方面本部長の判断をあおぎ、方面本部長は統合本部長の判断をあおぎ、統合本部長は大臣の判断をあおぎ……。
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