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一
ヘレンは犬のコロちゃんと、森へ散歩に出かけていました。
すると、いきなりコロちゃんが、
「こっちから甘いにおいがする!」と言って走り始めました。
「待ってよ、コロちゃん!」
ヘレンはコロちゃんを追いかけました。
「はあ、はあ、はあ……」
ヘレンがコロちゃんにやっと追いつくと、コロちゃんは一本の木の前で、わんわんわんとほえ続けています。
そして、
「この木だ、この木の実から甘いにおいが漂ってきてたんだ」と言います。
ヘレンはそのみきの太い木を見上げました。
今まで何度も森に来ていますが、こんな大きな木がこんなところにあったとは。
木の枝には、握りこぶしくらいの大きさの、見たこともない黄色い実がなっています。
ヘレンはその不思議な実をひとつ手でもぎました。そして実に鼻を近づけて、くんくんとにおいを嗅いでみました。
蜂蜜に似たような、とても甘いにおいがします。
コロちゃんは、
「とてもおいしそうな実だ。さっそく食べちまおう。ひとつおいらにおくれ」
そう言ってまた、わんわんわんと吠えました。
「だめよ、コロちゃん。勝手に食べちゃだめって、ママに言われてるでしょ。ひょっとしたら毒が入ってるかもしれないんだから」
ちぇっ、とコロちゃんは舌打ちをしました。
「この実をいくつかもいで持って帰って、食べていいかどうか、ママに聞いてみましょう。食べられる実だったらいいね」
ヘレンは木から実をみっつもぎ取って、ふたつは左右の手に持って、もうひとつは頭の上に乗せて、家に帰ることにしました。
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