カレー愁

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給食当番。昔、僕は、汁物担当だった。 蓋を開けると、熱波が上空を通過する。 冬に開けると、かじかんだ手が、温かくなる。 あまり話さない子とも、 今日は少なめで、とか。 おなか空いたから気持ち多めで、とか。 勿論、オーダー通りにはする。 だが、基本的に皆大体同じ量にしている。 例え仲が良い子でも。自分が密かに恋心を抱いている子でも。 普段は関わらないような、いつも目立っている人でも。 給食当番の週の僕の給食は、親切な人が、はじめに配ってくれている。 それが、嬉しかった。 たまに、足りなくなることがある。先生は、みんなに呼びかけて、少しずつ、足りない人のために、分けていく。 それだけのことが、取っ手以上に温まった。 皆が少し分け、一つを一人のために、作っていく。 「幸せって、作っていくモノなんだって」 「作る幸せって、あげる幸せの何倍も、幸魅力的だよね」 人気のカレーを配膳しているとき、誰かがそう囁いた気がする。 ───時が止まるなら、僕が当番で、みんなに配っているこの時間にしてほしいと思う。 本当に止まったなら、僕は、周りを見渡すだろう。 そして、 カレーを、死ぬほど食べるだろう。 温い時間が嫌な君は、浅い僕のネタに笑った。 満腹になったら、寂しくて泣いてしまうかもしれない。 もし、そうなることを知ることが出来たら、『今』がいい。 どうしても。どうしても、
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