4人が本棚に入れています
本棚に追加
三日目 日常
10月19日、晴れ。
梅さんの手料理を食べた。
梅さんは、微笑んで「美味しい?」と聞いてきた。僕は当然の如く頷いて、美味しいと答えた。
梅さんは嬉しそうな顔をして、「ありがとう」と言っていた。僕は、その笑顔を見るだけで、心が満たされていた。
両親は今、仕事中でいなかった。だから、この幸せな空間を味わっていたかった。
だけど、邪魔が入った。
いつも通り、陶器を扱っている店の店主が遊びにきた。海斗とかいう男だった。
梅さんは嬉しそうに海斗に駆け寄って、海斗の分のお弁当を渡していた。
「ありがとう、嬉しいぜ!」
さりげなく、海斗は梅の頭を撫でた。その時の笑顔が僕に向けての時と違って、僕は悔しくて唇を噛み締めた。
もし殺したら、梅さんは悲しそうな顔をするだろうか。
僕は、自分の醜い心に嫌気がさした。
10月20日、曇り。
僕は日記を書くのが、当たり前になっていた。
日記を書くことが、僕の生きがい、だけど、そろそろ学校に行かないと両親に叱られそうだ。
梅さんは学校だった。
僕は窓の外から、梅さんの行動を見ていた。
梅さんは、海斗と一緒に学校へ行っていた。
幼馴染だろうか、昔馴染みなのだろうか、僕は手首をかきむしりながら、苛立ちを抑えていた。
僕の方が愛しているのに。
少ししか時間たっていないけど、僕は彼女のことを本当に愛していた。
愛していると分かったのは、つい最近だけれど、それでも。
それでも、僕は彼女を愛したかった。
こんな僕を愛してくれた、彼女を愛したかった。
ああ、最低な人間だ。
死にたい。
10月25日、雨。
雨が降った、僕は部屋に閉じこもって自分を落ち着かせていた。
梅さんが心配げな声を出して話しかけてきた。だけど、僕は彼女の言葉に返すことはできなかった。
彼女の大事な人を殺そうと考えている僕のことを知ったら、彼女は僕から離れるだろう。それどころか、また一人になる。
それは嫌だ。
僕は彼女と一緒に人生を歩みたい、彼女といたい。
僕のわがままだと知っておきながら、泣きそうになっていた。
最近日記が全然進まない。
陰鬱な気分が続く。
今日もまた、生きている。
10月31日、大雨。
今日はハロウィンだった。
お化けの格好をして、梅さんの元へやってきた。梅さんは驚いた顔をしていたが、ちゃんと手作りクッキーをくれた。僕は隣に座って食べていた。
彼女はニコニコとしながら、僕の顔を見ていた。僕は彼女の顔をチラチラと見ていたが、彼女は微笑みながら「なんですか?」と聞いてきた。
僕は「なんでもないです」と声が裏返りそうになりながら答えた。
この幸せな時間を味わいたい。
でも、どうせ邪魔が入るのだろう。
と思っていが、今日は海斗は来なかった。
「今日海斗さん来ないんですね」
「ああ、海斗さんの師匠に修行つけてもらってるらしいですよ」
梅さんが微笑んでいった。
僕は、適当に返事を返した。
邪魔されないんだったら、それでいい。
最初のコメントを投稿しよう!