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四日目 理想
11月1日、曇り。
好きと紙一面に書き出した。だけど、醜い心を覗かれたくなくて、ゴミ箱に捨てた。
どうして、僕の願いは叶わないんだろう、欲しいと思えば思うほど、手が届かない。
無理矢理奪ってもそれは真実の愛なのだろうか。
きっと違うと思う、だから僕は諦めないといけない。
だけど、それは本当に思うのか?
最近考えている。
僕が彼女を奪って、僕が悪者になれば、彼女は僕を慰めてくれるだろうか。
馬鹿馬鹿しい考え方。
僕は、諦める以外の選択肢はないのに、なんで通じると思っているのだろう。
どこか心の中で諦めきれていない僕がいる。
醜い、こんな僕のことを知ったら、彼女は悲しむだろう。
梅さんが一言「嫌い」と言ってくれたら、それで、僕は諦めがつくのに。
どうして、梅さんはそんなこと言ってくれないのだろうか。
11月10日、晴れ。
学校に行ったら、友達を作れた。
ユウリという少女だった。
彼女は、彼氏がいるらしく、自慢話ばかりしてきた。僕は黙ってその言葉を聞いていた。
梅さんが何をしているのか気になっていたので、無視をし続けると「話聞いてる?」と聞かれたので、適当に返事をしていた。
僕のこんな態度だから、友達が作れないんだよとユウリに言われた。
黙ってほしい、本当に心の底から思った。
学校から帰ると、梅さんは海斗から陶器をまたもらっていた。僕は悔しくて唇を噛み締めていた。
なんで、僕じゃダメなんですか。
僕だって、あなたのこと真剣なのに。
「お帰りなさい」
そう微笑んでくれる。僕は言った。
「友達できました」
そういうと、梅さんは目を大きく見開いて、嬉しそうに言った。
「湊人が友達作るなんて! 赤飯炊かなきゃ!」
「おめでとう!」
梅さんと海斗は喜んで僕の頭を撫でてきた。
やめてくれ。
そんな。
そんな。
そんな、夫婦みたいに誉めてくるのは。
僕の心が壊れそうだ。
11月15日、曇り。
羨ましかった。
海斗がとても羨ましかった。
僕の手の届かない、梅さんに触れられて。
僕は、彼女のことを愛している。
とてもとても愛している。
だけど、そんな僕の愛なんて届きはしない。
そういうもんだった、わかっている。
横恋慕だということは。
だから、悔しかった。
だから、呪いたかった。
理想を考えた、僕が大人なって梅さんを養って、子供作って、幸せな家庭を築く。
そんな馬鹿馬鹿しい夢は破れるだろう。
僕はもう、嫌になっていた。
自分が嫌いだ。
彼女の邪魔をする自分が、大嫌いだ。
いなくなればいいのに。
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