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「15年以上前、夜中に突然男が現れて語るんです。俺は夢泥棒、お前の夢を喰いに来たって。僕の苺になりたいって夢はそいつに食べられてしまった」
ガキに夢泥棒について語ったのは、つい先日の話ではなかったか。人間の一生というのは、いやはやどうして短いのだろう。
「その日から、僕は1つの夢に取り憑かれた。あの日見た天使のような盗人を描きたい。月夜に照らされた羽根の1枚1枚まで正確に。でも、強い願いは夢泥棒の好物だって言っていたから、別の雑念で隠そうとした。リビングの賞やトロフィーはその産物です」
星野は悲しげな眼差しで俺を見た。
「貴方に話しかけられた時、心臓が飛び出すほど嬉しかった。けれど同時に、僕の夢を盗みに来たんだと分かった。ねえ、13番さん。貴方を描かせてくれませんか? 完成の手前で描くのをやめます。そうしたら、僕の夢を食べてください」
俺はキャンバスを見つめていた。瞳の部分と、羽根の部分が塗られていない。随分とハンサムに描いてくれるじゃねえの。俺は星野に向き直って言った。
「やめる必要はねえ。俺は、今日死ぬから」
水色に煌めく夢が1つ、俺の胸元に宿っていた。
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