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夢泥棒、俺達は人間の夢を盗んで喰う。いつから、どうして? そんなのは知らねえ。気がついた時には俺は俺で、夢を喰うことは当たり前のことだった。
夢にも色々と種類がある。2357番がそこら辺に詳しいんだが、語り出すと止まらねえから俺が簡単に説明しよう。
水色は純粋な夢、やましい気持ちが少ない夢だ。ガキに多いな。友達100人できるかなってやつだ。逆に赤色は不純な夢だ、こっちはそうさな、100人の美女に揉みくちゃにされたいって具合だ。
黄色の夢は軽い夢。夢として形は成しているが、中身が空っぽなんだ。最近多いんだよ黄色の夢。揃いも揃ってゆーちゅーばーになりたいっつってんだが、ありゃあ何なんだ?
黒色の夢は嘘の夢、本当の願いを隠している奴の夢だ。そして最後に白い夢、こいつは強く長く抱き続けた夢だ。極上の味だとかなんだとか、けど実際に喰ったって奴を見たことがない眉唾もんだ。
他にもあるが、まあざっとこんなもんだ。俺達は好きな時に好きな色の夢を喰うんだが、今俺がやらされてんのが夢ダイスだ。何の捻りもねえ、ダイスで出た色の夢を喰うだけだ。その日に喰えなきゃ罰ゲーム、寿命のない夢泥棒が編み出した退屈凌ぎの1つに過ぎない。
「13番が黒色以外を食べる日が来た!」
「赤! 赤出ろ!」
「赤は甘ったるいからやめて欲しいね」
そう言って振った100面ダイスが示した色は––––
「あっはは! 白だって!」
「罰ゲームは何にする?」
「一発ギャグ! 人間のモノマネとか?」
831番が余裕綽々で提案した。
「久々のダイスで白とは可哀想じゃあないか。どうだろう、3日間の猶予をつけるのは」
全部こいつの仕組んだ罠じゃないのか? そう恨めしく思ったが、3日の間でこいつらの興味が失せて、罰ゲームの存在を忘れてくれるかもしれない。
「くそったれ」
「御武運を〜」
俺は両の翼を大きく広げ、下へ下へと堕ちていった。
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