夢泥棒は死んだよ

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 俺は雲でできたフカフカのベッドにダイブした。 「あれあれ? てっきり期限いっぱい逃げ回るのかと思ったのに、随分早く音を上げたね」  こいつは俺に発信器でも付けているのだろうか、声のする方へ目をやると、831番が黄色い夢を絞ったジュースを啜っている。 「見つけたんだ白い夢を。一旦今日は引き上げた」 「ははっ! また馬鹿なことを……  冗談だよね?」  俺が無視を決め込んで寝ようとしたので、奴はさらに続けた。 「罰ゲームは無しにしてあげる。だからそんな怪しいものに関わるのはやめなよ。君も知っているだろう? 白い夢は呪われてるって話」 「お前が無理矢理誘ったんじゃねえか。今更なんだよ、俺が呪われちゃ寂しいってか」 「黒を捌いてくれる奴がいなきゃ困るだろう」 「照れんなよ」 「13番、僕は真面目な話を––––」  遮るように翼を広げ、俺は地上へ降りた。争い事なんて面倒なだけだ。いつもなら俺が折れてやる場面だったのに、今回はどうにも気が乗らなかった。  呪いの真相を暴こうとか、ゲームに負けたくないとか、そんなんじゃない。どうにも引っかかるのだ。何故あの白い夢は黒く覆われているのか? まるで誰かから守る為に隠しているみたいだ。一体何故?  地上に降り立つと既に朝日が登っていた。創造したスマートフォンが震えた。 「はい」 「あ、もしもし。朝早くにすみません。星野です」 「待ってたよ」  心臓もないのに、胸の高鳴りを感じた。    
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