夢泥棒は死んだよ

9/12
前へ
/12ページ
次へ
「どういうつもりだ!」 「うーん、盗めなかったか。それじゃあプランBだ」  投げつけた雲を物ともせず、奴はガサゴソと何かを探している。振り返ったその手には、足枷が握られていた。 「じゃじゃーん。昔666番が夢を喰い荒らした時に使った足枷! いやあ懐かしいねえ」 「俺に使おうってか」 「病んでる奴みたいに思わないでね!? 皆の総意だ。あの青年が死ぬまで大人しくしておくれよ。人間の一生なんて、僕らの1日みたいなものだろう?」  皆の総意、それはきっと事実だろう。なんだかんだで俺の事が心配なんだ。俺はゆっくりと奴に歩み寄って、足枷を手に取った。 「……お前の首、ほっそいな」 「え?」  ガチャンと音を立てて、足枷は831番の細く長い首に巻きついた。 「人間の1日なんて、俺らの一瞬みたいなもんだろう?」  俺の名を呼ぶ友の声が聞こえる。また明日、そう返す気にはなれなかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加