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ひらり。
花びらが落ちてきた。
それは、春を知らせる花、桜だった。
沢山の桜の花が青空に咲いている。
でも、わたしの心は晴れない。
ひらり、ひらり
花びらが落ちてゆく。
涙が花びらの上に落ちた。
あの人が好きだといった桜。
桜を髪に挿してみたら、あなたは「綺麗だよ」と言って笑った。
「どうして死んじゃったの?」
涙が次から次へと溢れ出てコンクリートを濡らす。
一週間前彼は自殺した。
どうして。
そばにいたのに、気づけなかった。
彼はいつも笑ってた。
隠そうとしていたのかもしれない。
だけど、相談さえしてくれれば
止めることができたのに。
ひらり。
花びらが落ちてきてわたしはそれを掴んだ。
握る手に力が入る。
彼は屋上から飛び降りたらしい。
わたしはあの人に想いを伝えられぬまま
この世界に残された。
桜の花びらを持っている手を握りしめる。
ねぇ、君がいない世界でわたしは一体どうしたら
いいの?
ひらり、ひらりと舞う桜の中、わたしはいつまでも
そこから離れなかった。
終わり
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