15人が本棚に入れています
本棚に追加
「願いを聞き入れてくださり、感謝いたします。
主よ――」
そう丁寧にお礼を述べた後、ミカエルはそっと私に向き直った。
「私は、ルシファーのいなくなった後から、大天使長だと言われているが、元は君と同じ守護天使だ。
私も間違いを犯したことはあるし、私には裁く権利も攻める権利もない。
しかし、導き諭してやることはできる。
――今回の試練が、君にとっていい魂の成長になったことを祈ろう。
彼を導いておやりなさい。
君はこれから、天使ではなく、一人の人間として暮らしていくのだから」
私は目を見開いた。
「元気でな、教え子よ」
その目には、大きな光の粒がゆらゆらと揺らいでいた。
私も自然に涙ぐむ。
どうして……私は――間違いを犯したのに、こんなにも優しくしてくれるんだろうか。
「…っここまで来れたのも、ミカエル様のおかげです。
私一人では到底なしえませんでした」
「……そうか。」
ミカエルの頬が子供を見守る親のように緩んだ。
私は、そのまま神の方に向き直る。
「ですが、主神様のお言葉は嬉しいのですが、私は、奏にひどいことをしてきました。
そばに入れる資格は、ありません。
私の分まで幸せに生きてほしい。
ーーそれが私の願い事です」
ミカエルも神も一瞬面食らったような顔をした。
しばらくして、ようやく神がニヤニヤしながら言う。
「ほう。それは困ったな。
お前はどう思う?――奏」
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!