第二十四話 願いはーー

4/11
前へ
/149ページ
次へ
「願いを聞き入れてくださり、感謝いたします。 主よ――」 そう丁寧にお礼を述べた後、ミカエルはそっと私に向き直った。 「私は、ルシファーのいなくなった後から、大天使長だと言われているが、元は君と同じ守護天使だ。 私も間違いを犯したことはあるし、私には裁く権利も攻める権利もない。 しかし、導き諭してやることはできる。 ――今回の試練が、君にとっていい魂の成長になったことを祈ろう。 彼を導いておやりなさい。 君はこれから、天使ではなく、一人の人間として暮らしていくのだから」 私は目を見開いた。 「元気でな、教え子よ」 その目には、大きな光の粒がゆらゆらと揺らいでいた。 私も自然に涙ぐむ。 どうして……私は――間違いを犯したのに、こんなにも優しくしてくれるんだろうか。 「…っここまで来れたのも、ミカエル様のおかげです。 私一人では到底なしえませんでした」 「……そうか。」 ミカエルの頬が子供を見守る親のように緩んだ。 私は、そのまま神の方に向き直る。 「ですが、主神様のお言葉は嬉しいのですが、私は、奏にひどいことをしてきました。 そばに入れる資格は、ありません。 私の分まで幸せに生きてほしい。 ーーそれが私の願い事です」 ミカエルも神も一瞬面食らったような顔をした。 しばらくして、ようやく神がニヤニヤしながら言う。 「ほう。それは困ったな。 お前はどう思う?――奏」 「え?」
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加