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幼い頃の奏のようで、3、4歳くらいだろうか?
誰かの膝の上で、楽しそうに微笑んでいる。
「これは――」
「ジャーン、タラリラリラリーン」
聞きなれた声が、奏の背中を一定のテンポで叩きながら、そう口ずさむ。
知っている。
だって、歌っているのは、私だから――。
「G線上のアリア……」
ミカエルが驚いて、鏡の中で口ずさむ私を見やった。
覚えている。
たしか、奏の最愛の祖母を迎えに行った時に、たまたま小さな男の子が、私に気づいたんだ。
泣きじゃくりながらこちらを見るのに、耐えられなくなって、泣き止ませたんだった。
奏が、覚えててくれたなんて――。
私の両目から、一筋の生暖かい涙がこぼれ落ちる。
……じゃあ、あの羽は――。
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