2945人が本棚に入れています
本棚に追加
この日も仕事終わりに鈴香と1杯だけ、と約束して食事して帰ることになった。新しい友人とはまだまだ話すことがたくさんあって、同じ境遇というのは気楽で楽しかった。そうだ、学生時代の友人たちとも“同じ境遇”でいるうちは楽しかったっけ。
鈴香ともまた……どちらかに恋人が出来たり、結婚したら変わるのかな。もし私が結婚したらもうわだかまりなく既婚者のグループに入って、元の通り楽しく出来るのだろうか。……それって結局のところ、周りのせいではなく自分の中の問題だ。
なんとも情けない。
「そりゃそうよー。価値観なんてすぐに変わるんだから。あ、そうそう。今日は適当に暇な人声かけたから」
私が気にしていたことを鈴香はあっさりと言い放った。
「ずっと人間関係が同じなわけないでしょ。会いたかったら会えばいいし好きにしたらいいじゃん。社会人の仕事以外の人間関係で疲れたくない。ね、楽しくいこう」
「うん。そうだね」
これからどうなるか、なんて考えないで楽しく過ごそう。鈴香といると気持ちが軽くなるから不思議だ。それから、面識はあるが話したことのない、ましてやプライベートな話なんてすると思っていなかった男性二人が合流した。
同い年の井上くんと一つか二つか上の浦野さんだ。他部署なので直接的な関わりはなかった。
「おー、長谷さんだー」
「や、ほんと。初めましてじゃないけど初めましてー」
そんなゆるい感じで共に食事を楽しんだ。
最初のコメントを投稿しよう!