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とにかく私は直ぐに彼の家のインターホンを押したが留守らしかった。引き返すと治司さんに助けを求めた。さっき前を通った時、まだ接骨院の電気がついていたのだ。
治司さんも慌てて外へ出てきたが、彼の様子を手早く確認し
「うーん、酔ってるだけかも……」
と言った。治司さんが彼の自宅を確認してくれたがやっぱり留守で、鍵が閉まっているとのこと。起こしても起きない様子から、治司さんが念のため救急車を呼んだ。
「ごめん、都さんついていてもらっていい? 俺ぎっくり腰で動けないおばぁちゃんほったらかしで」
「あ、はい」
「彼のカルテ確認してご家族には連絡しておく。都さんにも一報入れるから」
「はい」
私はただ指示に従って、救急車は病院に到着した。緊急性のないことから結構後回しにされたことに焦れたけれど、大丈夫そうだとホッともしていた。
彼は点滴をされて横たわっていたが、意識を取り戻すと私に向ける視線が戸惑っていた。おそらく、誰だろうと思っている、そんな目だった。以前会った時は私の顔を認識してなかったのだろう。それはそうだ。私も今初めてしっかりと顔を見たのだから。
……わぁ、綺麗な顔。血の気のない白い顔がまるで人形の様で、美しさが際立つ。
「……あの、」
掠れた低い声にハッとなった。そうだ、見とれている場合じゃなかった。
「あっ、大丈夫で良かったです。道で倒れれれていて、私、たまにサモエドのきーちゃんとのお散歩でお会いする近所の者で」
焦って噛み倒したが、きーちゃんの名前を出すとその人は幾分ホッとしたようだった。
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