28人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
正直、怪しい。確かに充希はどこか抜けている所があるが、基本的に思慮深い。本当に、つい先ほど思いついた案なのか。
だがまあ、彼がこれを"真実"だと語るのなら、これ以上の追求をしようがない。それに正直、どちらでも良いことだ。
だから俺は「……そうですか」と嘆息一つで了承した。そして本題に入る。
「……充希さんは、どう思いますか?」
「どう、とは?」
「栃内さんです。なにか、変わったこととか」
「そうだな。今日は髪を結っていたな。そして表情も随分と明るくなった。キュートだな」
「いえ、そうでしたけど、そういうのじゃなくて……」
平日の駅周辺は人も疎らだ。そしていちいち他人の会話を盗み聞きするほど、暇な人もいない。
俺は双眸だけで周囲をさっと確認してから、戸惑いを口にした。
「……洗面台の鏡に、目隠しがあったんです」
「……それが何か?」
「昨日は、ありませんでした。病院側が自主的にそのような提案をする可能性は極めて低い。おそらく、栃内さんが依頼したのだと思います。……どうしてだと思いますか?」
「鏡に目隠し、ねえ。巧人はどうみる?」
最初のコメントを投稿しよう!