バーベナの決意

16/22

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
「部屋付きのシャワーを利用した場合、着替えはあの辺りのスペースで行う必要があります。その際、自身の身体が映るのを気にしたのかなと」 「奥ゆかしい女性ならば、確かに抵抗があるだろうな。ましてや自分は警察に"管理"されている。マジックミラーの可能性を疑っても不思議ではない」 (……やっぱり、特別な意味などないのか?)  充希も賛同するのなら、やはり俺の考えすぎなのだろう。上から特に探れとの指示もない。  "VC"となった自身の姿を見たくないから、という線も考えたが、栃内は俺達に「私は私」と宣言している。あれは自身の変化を、受け入れた目だった。  だが、どうにもその言葉に、微かな引っかかりを感じているのも事実だ。 「そんなに気になるのなら、本人に聞いてみたらいいじゃないか。両親の話もした。昨日の"密談"によると、自身の衝撃的な過去を話してくれたというのは、十二分に心を開いてくれた証になるのだろう? 目隠しの有無なんて、取るに足らない質問じゃないか」 「そう、ですけど……」  人の疎らな電車の車内。  端の座席に並んで腰かけ、暫く考えてから俺は「いや」と額に手を遣った。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加