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事前にカメラを破壊するでも隠すでもなく、むしろ気付いてさえいないような素振りからして、おそらく知能犯ではない。
証拠に、手紙の用紙は綺麗なものだったが、封筒からは数人の指紋が検出された。
投函時も、薄いビニール手袋でもしていなければ、素手のように見て取れるとのことだったし……。
隠れたいのか、知って欲しいのか、ちぐはぐだ。
だがこの矛盾はそれだけ、犯人の感情が暴走しているということを示す。
指紋照合の結果、犯罪歴はなし。初犯ならば尚更、根強い感情が渦巻いているに違いない。
詳しい検査結果が出るまでには、まだ数日かかる。
犯人がそれまで大人しくしているという保証もないのだから、俺はやっぱり、充希の側を離れるわけにはいかない。
「明日も天気がいいとの予報でしたし、差し入れを持ってくるので、あそこのベンチでお茶でもしませんか? そろそろ、警察の方も了承してくれるでしょうし。栃内さん、食べたいお菓子とかありますか?」
「……そのことなんですが」
栃内が、不意に表情を曇らせた。
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