優しきホームズごっこ

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優しきホームズごっこ

 こうして二日後の再訪を約束した俺達は、翌日、久しぶりに朝から相談所を開けていた。  とはいえ、元より繁盛しているとは言い難い店だ。  充希は家に用意されていた小説本の一冊を片手にソファーで寛いで、俺はカウンター席で本部から受けった資料を確認しながら、コーヒーを味わっていた。  栃内は順調に回復しているようだ。自傷行為もなし。  このままいけば、予定通り一週間後には、退院できるだろう。  仕事は彼女の言葉通り、円満に退職していた。珍しいパターンだ。  退院後は、いったい何をして過ごすつもりなのか。  浪費家ではないようで、暫く働かずとも問題ないくらいの貯蓄はあるようだから、心身のケアも兼ねてのんびりするのかもしれない。 (……残り一週間か。そろそろ、あと一押しがほしいな)  日々の様子からして、まだ不安定な部分はあるが、前を見据えてくれているのだと感じる。  ただ、"大丈夫"だと確定するだけの、裏付けがない。  彼女には"未練"が見当たらないからだ。  近しい人や、大切なモノ。  そういった、"手放せない"なにかがあれば、それは"生"への執着となる。 「……充希さん」
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