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「おや、寂しくなったかい?」
「違います。栃内さんから、何か大切なモノとか聞いてませんか?」
「そうだな」
顎に指先をあてて考え込む素振りをした充希は、
「僕が思うに、彼女の一番は、亡くなられたご両親ではないかな」
「それは……そうなんですとも。そうではなくて、今あるものでです」
「ああ、僕のあげたバーベナは、なかなかに大切にしてくれているな。少し萎れてきているが、まだ世話をしてくれている。これはつまり送り主である僕にも、同じだけの愛情を向けているいう可能性も……!」
「やっぱり充希さんも思い当たりませんか……。あと一週間で、探らないとですね」
彼女が退院するまでに、なにか一つでいいから、確証がほしい。
課題事項を定めた俺は、栃内について記された経過報告書を捲って、次の用紙に目を走らせた。
「……これはまた、面倒な」
思わずこぼれた恨み言に、充希が疑問の目を向けてくる。
俺は書かれた文面を追いながら、
「封筒の差出人ですが、わからないことがわかりました」
「ほう? ということは、わかったこともあるということか」
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