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「……"VC"に噛まれ、ウイルスに感染した場合、生存率はたったの三割だ。殆どが死ぬ。小学校で習う、最早一般常識だろう?」
「んーそうなんだけどさ」
須崎はニッと笑って見せた。
「"運命の相手"だから、死ぬ筈ないんだって。でも死んじゃったし、違ったみたいだね」
「!」
(こいつ、恋人をなんだと…………!)
瞬時に沸騰する腹の底。
フラッシュバックする、忘れられない、忘れられる筈のない、唯一無二だった姉さんの笑顔――。
膨れ上がる嫌悪と怒り。だが俺はただ冷静に、「なら、この彼女は?」と問うてみせた。
こうして身勝手な"VC"に出会ったのは、なにも初めてじゃない。むしろ、数え切れない程見て、話してきた。
息を吐いて吸うように、"本心"など、殺せる。
押し付けたジャケットから染み出る血液が、俺の掌を赤く染めていく。
須崎は少しだけ双眸を細めてから、視線を外して肩を竦めた。
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