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帰宅時に持ち帰るまで、目の届くところにないと落ち着かない。
充希は本を伏せ置くと、すっかり冷めたコーヒーを飲み干して、空のカップをカウンターに運んできた。
「ただでさえ巧人は忙しいというのに。このまま"悪戯"で終わるよう願うよ」
ちょっと、驚いた。
それが顔に出てしまったのだろう。「僕はいま、何かおかしなことを言ったかな?」と首を傾げる充希に、俺は慌てて「いえ、その」と口を開く。
「ホームズごっこなんて言ってたから、てっきり何か動きがあるのを楽しみにしているのかと……」
しどろもどろ伝えた俺に、充希は心底心外そうな顔をして、
「とんでもない。巧人の懸念通り本当に襲われでもしたら、巧人はその身を挺して僕を守るだろう? 怪我でもしたらどうする。キミは僕達と違って、かすり傷一つ治すのにも数日を要するのだぞ。僕はまだこの国を去る予定はないし、巧人以外と組むつもりもない。立場上、僕を守るなとは言えないが、巧人には健康でいてもらわないと困る」
「……お気遣い、ありがとうございます」
「なにを言う。当然のことだ」
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