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呆れたような視線で見上げてくる充希から、カウンター越しに空のマグカップを受け取る。
(……本当、なんで俺なんだ?)
最初の仕事に居合わせたからか? にしては、執着が強すぎる。
とはいえ俺には何もない。金も、権力も。
これといった特殊事項といえば、せいぜいこの仕事くらいだ。それだって、俺が"使えなく"なれば、代わりがいる。
「……おかわり、いりますか?」
「ああ、是非そうしてくれるとありがたいな」
カウンターの椅子に腰かけた充希が、嬉し気に頷く。
俺は新しいマグカップをサーバにセットして、その間に使用済みのカップを洗う。
「……俺に取り入っても、メリットないですよ」
カップを水きりに置いて、出来上がったコーヒー入りのマグカップを充希の眼前に置いてやる。
ありがとう、と呟いた充希は、カップを左手で持ち上げひとくち味わうと、
「……例えばこうして美味いコーヒーを口に出来るのも、僕からすれば充分"メリット"になり得るのだけどね」
「誰にでも出来ることです」
「巧人からすれば、そうなのかもしれないね」
どうして俺なんですか。
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