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そう問うたなら、充希はなんと返してくるのだろう。
疑問は今にも胸の内を突き破りで、だからこそ俺は、慎重に腹底へと押し込んだ。
尋ねるには、今はまだ、早すぎる。そんな予感がするからだ。
「……あ、そうだ」
ふと思い出した俺は、戸棚から目当ての包みを二つほど取り出した。
「よかったからコレ、コーヒーのお供に」
「なんだい? これは」
「チョコレートです。以前、手助けした依頼人が持って来てくれたんですけど、俺、あまり甘いモノは得意じゃないので」
「……客に出すために、取っておいたのではないのかい?」
「ああ、いえ。せっかく俺にと持って来てくれたモノですし、ちょっとずつ消費していたんです。なので完全に俺の私物ですよ」
「……あっはは!」
突如、充希が声をあげて笑い出した。
「いやっ、すまない……っ! あまりにも、あまりにもでね」
「はあ……?」
狼狽える俺に片手を上げながら、充希は息を整えて目尻に浮かんだ涙を拭った。
「巧人は本当に、優しいな」
その言葉が今の爆笑と、どう繋がるのか。
尋ねるのも面倒で、俺はひとまず「……ありがとうございます」と告げた。
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