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もう一人の"家族"
お昼は簡単にパスタをソーセージと一緒に茹でて、市販のソースをかけて食べた。
充希はあまり馴染みがないようだったが、随分と気に入ったようで、興奮気味にナポリタンをお代わりしていた。
事態が動いたのは、再びコーヒーを手に、それぞれの時間を過ごしていた時だった。
突如開かれた扉に、ピンポンと鳴り響く電子ベル。来訪者だ。
「ごめんください。開いてます?」
覗き込むようにして顔を覗かせたのは、白髪混じりの小柄な女性だった。
歳は七十辺りだろうか。背が少し曲がっているが、華やかな色みのリップと派手過ぎずも小綺麗な身なりが、快活さを印象付ける。
"VC"ではない。だがウチに来るということは、"VC"関連だろう。
手元の資料をカウンター下へ滑らせながら、俺は「ようこそいらっしゃいました。中へどうぞ」と笑顔で促す。
いつの間にか充希はマグカップを手にソファーから立ち上がっていて、カウンター席の端へと移動していた。
「ようこそ野際相談所へ。まずは肩の力を抜いて、ゆるりと寛いでくれ」
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