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わが物顔で告げる充希に、女性は「もしかして、あなたが所長さん? 随分お若いのね。てっきりこちらの彼が所長さんかと……」
「あ、いえ、私がここの所長です」慌てて訂正する俺に、
「僕はしがない助手といった所だな。まだ見習いもいい所だが、所長が貴方の為にこだわりのコーヒーを淹れている間の、話し相手くらいは出来る。ミルクと砂糖はご利用で?」
「あらあらまあまあ、それじゃあお願いしようかしらね」
「だそうだ、頼んだよ所長」
女性を中央のソファーへ案内し、隣り合って充希も腰を下ろす。
いや、普通は対面だろ。というか、こだわりも何も俺はカプセルをセットするだけで……。
いや、もう何も言うまい。
ごく自然と身軽にさせられた俺は、カウンターを回ってコーヒーメーカーに来客用のコーヒーカップを置き、カプセルをセットした。
機体がごうごうと湯気を上げ仕事をこなしている間に、足元に設置されている小型冷蔵庫から牛乳を取り出し、IHコンロに置いたミルクパンで簡単に温める。
左手で鍋を軽く揺すりながら、右手でカウンター下から木製のトレイを取り出した。
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