もう一人の"家族"

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「うふふ、ありがとう充希ちゃん。私は鐘盛菫(かねもりすみれ)って名前。新宿六丁目で細々とボロアパートの大家をしている、ご覧の通り"N"のお婆ちゃんよ。今日はね、訊きたいことがあって来たの」  言いながら鐘盛はコーヒーにミルクと砂糖を混ぜ、スプーンでくるりと回すとゆっくり口をつけた。 「あら、ホントに美味しいわ」 「口に合ったようで嬉しいよ」トレイをカウンターへ戻した充希が、満足気に頷く。  鐘盛は味わうようにしてもう一口を含んでから、意を決したように薔薇色の唇を開いた。 「……人を探しているの。あなた、一週間前にこの近くで起きた通り魔事件の被害者を知っているでしょう? 女性が二人噛まれて、犯人の"VC"が突然、心臓発作で死んだやつよ」  カップを受け止めたソーサーが、カチャリと音を立てる。  俺はあえて、口元に笑みを浮かべた。 「どうして私が関係者だと?」
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