もう一人の"家族"

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「ここ一週間近く、現場付近で目撃者を探していたの。そうしたら、逃げていく人とは反対側に走っていった男を見たって子がいたのよ。髪は黒いから"N"。自分も逃げていたからちゃんと見ていなかったけれど、野次馬って感じではなかったって。そうしたらその話聞いてた焼き鳥屋の店長がね、もしかしたらこの相談所の人じゃないかって教えてくれたの。"N"なのにわざわざ吸血現場に好き好んで行く"変人"は、早々いないってね」 「巧人は有名人だな」感心したように呟く充希に、 「出来れば"変人"って肩書なしで周知されるといいんですけど」俺は嘆息交じりに頭を垂れる。  店の存在が周知されていくのはありがたい。だが"変人"が誇張されてしまったら、来るのを躊躇(ためら)う人が増えそうだ。  俺は頭を首だけで戻し、「ウチにお越しいただいた経緯はわかりました」と話を戻す。 「お探しになられているのは、被害者様ですか?」 「あら、(さと)いわね。わざと言わなかったのに」 「すみません。鐘盛さんを疑っているわけではないのですが、ウチみたいな仕事は"情報"を慎重に扱わないと痛い目を見るので」
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