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「携帯をね、落としそうだったから両手で必死に抑えてたのよ。なのに何度かけても繋がらないどころか、そのうち呼び出しも出来なくなっちゃって。いつもならね、電話が取れなくても、暫くしたらメールをくれるのよ、あの子。なのにその日は、いくら待っても来なくて……。その日は携帯を手に握って寝たわ。ちっとも寝られなかったけど。次の日も、朝から首に下げていたわ。あの子から連絡が来たら、直ぐに出れるようにって。……連絡が来たのは、その翌日だったわ」
深く息をついて、鐘盛は一度コーヒーを含んだ。
「……開口一番に『連絡が遅くなってごめんなさい』なんて謝ってくるから、そんな事より身体は大丈夫なのって訊いたの。そうしたら、大丈夫ですって。笑って言うのよ、あの子。勿論、顔なんて見えてやしないわ。それでも分かったのよアタシには。四年前、あの子が私に全部を話してくれたあの日から、あの子は私の娘みたいなモノだったから」
「なるほど、キミ達は"家族"か」
「アタシが一方的に、お節介焼いているだけよ」
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