もう一人の"家族"

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「生死をさ迷った直後だ。"ただのお節介焼き"にわざわざ電話なんてしないさ。おまけにその"大丈夫"は、キミに心配をかけたくないがための言葉だろう?」 「……そうね。あの子は優しくて、強がりだから」  緩く首を振るも、その双眸はどこまでも温かい。  本当に、彼女にとっては愛おしい"娘"なのだろう。 「……電話で彼女は何と?」 「"VC"専用の病院で入院中だって教えてくれたわ。まだ事件の捜査があるから詳しいことは言えないけど、警察の用意した警備員もついてるから安全だって。身体も、至って健康だって言ってたわ。まだ慣れないけど、痛みもない。……それと、お願いがあるって」 「お願い?」  鐘盛の眉根が苦悶(くもん)に寄る。 「家を、解約したいって言ったのよ、あの子。お金はいくらでも振り込むから、部屋に残っているモノも処分しておいてほしいって」 「…………え?」
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