もう一人の"家族"

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 俺は思わず、言葉に迷う。そんな俺を見かねてか、丸椅子で優雅に足を組んでいた充希が、穏やかな声色で言葉を紡いだ。 「まだ、ということは、いずれは教えてくれるのだろう?」 「……はい。出立するときには、全てお話します」 「だ、そうだ巧人。僕はここまで話してくれた彼女の意志を尊重したい。だがあのご婦人に何も出来ないでは、あまりにも心苦しい。ということで、だ。ご婦人には彼女の言葉を届けたうえで、僕達と共に"出立"の時まで待ってもらうよう、懇願(こんがん)してはどうだろう? それと、彼女達が一日に一度は通話出来るよう、警察への嘆願(たんがん)を」 「えっ?」  目を丸くした栃内が、小首を傾げ瞬く。 「私、通話が制限されているってお伝えしましたっけ?」 「いいや? だが"捜査中"はそうした制限がつきものだと、巧人が」 (おいおいおいおい!)  なにサラリと内部事情暴露してんですかアンタ。てかそれよりもフォローしないと!  顔面にへらりとした笑みを張り付けつつ、必死に思考を巡らせる。  と、俺がそれらしい言い訳を口にするよりも早く、 「そうでしたか」栃内が納得したように頷いた。
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