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「泣いて喜んだそうだ。本当にありがとうございますってな。許可をくださった警察関係様にも、是非お礼をお伝えくださいだとよ。律儀で優しい人だな、あの女性は」
……良かった。栃内も、喜んでくれたのだ。
そう思うのに、何だこの違和感は。
「腑に落ちない、って顔だな」
事務所二階の扉を開けた途端、一階のソファーで本を片手に寛いでいた充希が肩を竦める。
「……コーヒーのおかわりですか? 今、行きます」
スマホをポケットに押し込みながら階段を降りていくと、充希は軽く笑って
「そういうつもりではなかったのだが……有難く頂くよ」
ほらやっぱり、違わないじゃないか。
一階のカフェスペースへ足を向けた俺は、カウンターを回り、いつもの手順でコーヒーを二つ準備する。
コーヒーカップは客専用。俺達はマグカップ一択だ。
充希はお気に入りのソファーから身体を起こし、カウンター席へと歩を進めると、俺の対面に腰掛けた。
最近気づいた事だが、この場を選ぶ時は俺と"実のある"会話をする意思がある時だ。
つまり彼は、先程の問いの答えを待っている。
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