もう一人の"家族"

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「結果はどうであれ、彼女はこれからあのご婦人を置いて行くことになるだろう? 大切な相手ならばそれだけ、未練になる。巧人も以前、似たことを言っていたからわかるだろう? おまけにあの"バーベナ"は、置いて行かれる者の気持ちをその身を持って知っているんだ。会ってしまったら、相手を目の前にしたならば。触れた温もりを手放すのは、互いにとって想像以上に難しく、残酷だ」  そしておそらく。  充希が茶化すように片目を眇める。 「巧人、キミも彼女にとっては"未練"になりそうだ」 「は? 俺がですか? ……根拠は」 「キミの"人嫌い"を否定するつもりはないがね。今後の為にも、もう少し感性を磨くと良い」 「つまり根拠のない、貴方の勝手な妄想だと」 「言うならば経験に基づく直感さ。……まあ、確かに現時点では、巧人を納得させられるだけの材料はないがね」  ほらみろ。やっぱりただの妄想じゃないか。  俺は呆れ交じりに息をついて、持ち上げたカップに口をつけた。  ほどよく冷めたコーヒーが、舌状に苦味を残して落ちていく。  脳裏には、花のような笑みでこれからを語った彼女の、希望に満ちた顔。
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