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哀しき復讐と未練
翌日、顔を出した俺達に、栃内は頭を下げて感謝を述べた。気が付いたら、許可の出た一時間まるまる使っていたと。
話す表情はやはり喜びに溢れていて、だからこそ尚更、余計なことを言い出しそうになる。
『やっぱり、一度会ったほうがいいのでは』と――。
(ダメだ。彼女が"置いていく"と決めたのだから、余計に苦しませることになる)
「わ、このみたらしのお団子、すごく美味しい」
延期になっていた、中庭での花見会。
俺達の間に座る栃内が、口元に手を添えながら感嘆の声を上げた。
「ちょうど百貨店で和菓子展をしていたんです。すみません、俺あまりそういうのに詳しくなくて……しかもよくよく考えてみたら、栃内さんの希望もちゃんと聞いてないしで、適当に見繕ってきてしまったんですが……気に入って頂けたのなら良かったです」
「もう、野際さん。困ります。こんなに沢山の種類を買ってきてくださるなんて、全部食べたくなっちゃうじゃないですか」
「あ、その、味の好みも把握してなかったので……」
狼狽える俺に、栃内はふふっ、と頬を緩めて、
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