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苦笑交じりに告げる俺に、充希がゴマ団子の入ったパックを向けてくる。
「つまり巧人への贈り物は、甘味以外であるべきということだな。僕は大好きなのだけどね。誰にでも得手不得手はあるもんだ。なんにせよ、甘味が苦手だからといって、巧人の魅力が損なわれることはない」
「……ですから、いちいち仰々しくないですか?」
「そうかい? 僕は心のままに事実を述べただけなのだが……」
プラスチック製のパックから一本を手に取る俺の横で、栃内がおかしそうに笑う。
「ふふ、本当に今日は晴れて良かったです。すごく楽しいお花見」
「……栃内さんが喜んでくれて、なによりです」
微妙な心地で告げた俺に微笑むと、栃内は充希に視線を流し、
「充希さんは、どれにされるんですか?」
「そうだな。僕はこの"桜餅"というのがいっとう気になるね。美しい桜を菓子として食べるとは、なんとも興味深い。……だが、桜を楽しむ前にだね」
物言いたげな充希の双眸が、俺に向いた。
「ちょっとばかり、ここを離れてもいいかな? なに、心配ない。すぐに戻ってくるさ」
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