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ともかくコレで、場は整った。あとは生きるも死ぬも、俺次第だ。
「……キミが、あの手紙をくれたんだね」
俺の言葉に、微かにだが犯人の肩を揺れた。顔が上がる。
黒髪の、青年だった。二十代半ばくらだろうか。
前髪の影に色を濃くした双眸の下には青みがかったクマがあり、唇はかさついて所々切れている。
「……どうして、アナタは生きているんです?」
小さく呟いた青年の声は、微かに枯れていた。
「僕の大切なヒトを殺したのだから、死ぬべきじゃないですか」
まっすぐ射貫く双眸に、確信する。
青年の狙いは俺だ。充希じゃない。
(なら、俺に注意を引き付ければ、あるいは……)
「……キミはいったい、誰を殺されたことに怒っているのかな」
訊ねた俺に、青年は目を見開いた。
どこか裏切られたような表情だった。
「……本気で、言ってるんです?」
途端、青年は歪な笑みを浮かべ、
「は、ははっ。やっぱり、ただの偽善者だったんだ。いえ、詐欺師ですね。"VC"の為になんて、ぜんぶ嘘っぱちだったんだ」
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