哀しき復讐と未練

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「……"吸血"によって心臓発作を起こすケースは、以前から各国で確認されているし、日本でも事例がある。残念だけど、蓮くんはその希少なケースに該当してしまったんだ。……大切な人を失った事実を受け止めるのは、簡単なことじゃないよね。でも、事実は事実として受け止めないと――」 「あなたに、何がわかるんです?」  蔑むような眼が、俺を射る。 「蓮は……蓮はですね。僕の、全てだったんですよ。なにもかもからゴミのように掃き捨てられていた僕を見つけてくれて、僕の曲を好きだと言ってくれて、それこそ命をかけて、歌ってくれてた。他の人の曲を歌えば、もっと有名になれたのに、それでも"俺が歌うのはお前の曲だけだ"って、ずっと……おにぎり一つしか食べれない時でも、笑って僕の曲を待っててくれたんです。わかりますか? 僕は蓮の為に生きてた。蓮は僕の心臓で、血液で、酸素だったんです」  悔しいのか、悲しいのか。充希に回る青年の手が、微かに震える。  が、彼は悲愴というよりは憎悪に満ちた顔を上げ、
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