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「……アナタと一緒にいた、あの女。蓮に噛まれて、生き残ったほうですよね。女は助けたのに、どうして蓮は、見殺しにしたんですか」
「……見殺しになんてしてないよ。手は尽くしたけれど、助けることは出来なかった」
「ほら、やっぱりそうだ。アナタが、殺したんだ」
(……平行線、だな)
だが、わかった。この青年は、大切だった須崎の死を受け止めきれずに、誰かのせいにしたいのだ。
それ故に"吸血"の現場にいた……須崎の死に立ち会った俺を"犯人"としたのだろう。
まあ、実際のところ、青年の読み通りに"死の理由"は別に存在するが……"ヴァンパイアキラー"を噛んだからとは、口が裂けても言えない。
(清は、まだか)
栃内の入院病棟は、この中庭のある本館とは渡り廊下で繋がった別棟だ。
清はともかく、そもそも彼女が戻るにも時間がかかるだろう。
充希だけでも、守らなくては。
「キミの目的は、僕を殺すことかい?」
「……そうですね」
「なら、そのナイフは僕に向けるべきだ。キミが拘束しているその彼は、解放してくれないかな」
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