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「僕を殺せなかったキミだけが、ずっと、永遠に地獄の中だ。……さようなら」
「――まてっ! そんなの許すもんか!!」
瞬間、青年が充希を放り捨て、俺に向けて駆け出した。
と、充希が即座にしゃがみ込み、床に添うようにして左脚を伸ばす。
「!?」
躓いた青年が、バランスを崩した。
その隙に間合いを詰め、青年の腹部を膝で蹴り上げる。
「――ッ」
即座にナイフを持つ手を掴み、脚をその背に回して青年を地に落とした。
「――あがっ!」
俺の体重を乗せ床に沈み込んだ身体から、苦痛が響く。
掴んだ青年の手首に一層の力を込め、可動域とは反対側へ押し上げると、苦悶の声と共にナイフが落ちた。
――確保。
過った安堵に、どこかのんびりとした充希の声が重なった。
「お見事だね、巧人」
「……よく、わかりましたね」
俺が長々と告げた充希への"今生の別れ"には、"もう好きにしていい"、"出来れば足掛けしてくれ"という意図を込めていた。
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