哀しき復讐と未練

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「蓮じゃなくてあの女が死ぬべきだったんだ! あの女が噛まれたのに生き残りやがったから! 蓮は……っ!」  支離滅裂……なんて、錯乱状態の相手に理論を求めるだけ無駄だろう。 「……キミは僕を"ヒト殺し"だと言うけれど、蓮くんは"吸血"で恋人の子を死なせているし、あの女性だって、命こそ助かったけれど、生死をさ迷ったんだ。おまけに一生、"吸血前"の日常には戻れない。蓮くんは、二人の人生を奪った"ヒト殺し"だよ」 「はっ! 蓮の命が、あの女どもの命と同等の筈ないでしょう? そもそも、前提から間違っているんですよ。アイツらが噛まれにきたから、蓮は噛んだ。仕掛けてきたのはそっちなのに、いざ噛まれたら被害者面ですか。汚い女どもだ。……ああ、そうか。その女どもの血が汚かったせいで、蓮は心臓発作を起こしたのか」 (――コイツ) 「それは、違う。あり得ない」  手首を握る指先に、ぎりりと憤怒が籠る。 「! いっ……」
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