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「つまるところキミは、愛する彼への忠心ゆえ、正義の名の下に"報復"を行おうとしているのだろう? 牙の代わりに刃を持ち、その身を捧げて。キミに主観を置くのなら、確かに彼は悲劇的にも"吸血"を行ってしまった、哀れな青年になる。僕も巧人も、噛まれた女性たちさえも、彼を死に至らしめた"悪"に違いない」
「……どうやらあなたは、理解力が高いようですね。やっとまともな会話が出来そうです」
「ちょっ、充希さん……!」
驚愕に声を上げた俺に、充希さんは片手だけを俺に向けた。
静止の合図。反射的に口を噤んだ刹那、
「それはどうだろうか。僕はね、いま猛烈に腹が立っているのだよ」
「!」
温度の低い、剣呑な笑み。息をのんだのは、俺だけではないはずだ。
おそらく俺と同じ表情をしているであろう青年に双眸を固定したまま、充希は鼻で笑うような仕草をして「そうだな」と話を続けた。
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