哀しき復讐と未練

24/34
前へ
/254ページ
次へ
 そんな本音を口にしては更に怒られてしまいそうで、俺は肩を竦めるに留めた。 「……事務所に届いてた手紙の件も、彼だった。後の事はよろしくな」 「……優秀な俺サマがトチるワケねえだろ。ぶん殴るぞ」  俺との会話を切り上げた清は青年の腕を掴むと「オラ、立てってんだよ」と力任せに引き上げ、片腕を担ぐようにして出入口へと向かっていった。  そのタイミングを見計らったかのように、遠くからサイレンの音が近づいてくる。  青年の耳にも届いているだろうに、その後ろ姿から変化は読み取れない。 (……ひとまずは、これにて一件落着か)  一度も振り返ることなく、二つの背が自動ドアの向こう側へと去っていく。  半透明のドアが再び外界とを隔てた刹那、共に見送っていた充希がおもむろに口を開いた。 「すまなかった、巧人」 「へ!?」  これまで聞いたことのないしおらしい声に、思わず驚愕の眼を向けると、充希が「どうした?」と首を傾げた。 「いえ、そんな真面目なトーンで反省されている充希さんは初めてだったので……ちょっと、ビックリしました」
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加