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そんな本音を口にしては更に怒られてしまいそうで、俺は肩を竦めるに留めた。
「……事務所に届いてた手紙の件も、彼だった。後の事はよろしくな」
「……優秀な俺サマがトチるワケねえだろ。ぶん殴るぞ」
俺との会話を切り上げた清は青年の腕を掴むと「オラ、立てってんだよ」と力任せに引き上げ、片腕を担ぐようにして出入口へと向かっていった。
そのタイミングを見計らったかのように、遠くからサイレンの音が近づいてくる。
青年の耳にも届いているだろうに、その後ろ姿から変化は読み取れない。
(……ひとまずは、これにて一件落着か)
一度も振り返ることなく、二つの背が自動ドアの向こう側へと去っていく。
半透明のドアが再び外界とを隔てた刹那、共に見送っていた充希がおもむろに口を開いた。
「すまなかった、巧人」
「へ!?」
これまで聞いたことのないしおらしい声に、思わず驚愕の眼を向けると、充希が「どうした?」と首を傾げた。
「いえ、そんな真面目なトーンで反省されている充希さんは初めてだったので……ちょっと、ビックリしました」
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