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「ああ、そうか。"アモーレ"というのはイタリア語で"愛する人"という意味でね。なあに、今時性別の壁など取るに足らない話だろう。その長い命が尽きるその時まで共にあると約束してくれるなら、望むモノを望むだけ、欲するままに与える生活を保障しよう。金は腐る程あるんでね。どうだい? 悪い話じゃないだろう?」
「…………なあ、コイツ頭イっちゃってんじゃないの?」
無遠慮に指さしながら、須崎が俺に同意を求めてくる。
「……ええと、キミ。ここは危ないから、直ぐに離れて――」
「おっと、キミ。空気を読みたまえ。人の"プロポーズ"を邪魔するのは野暮ってものだろう?」
「いや、だからその、状況を…………」
「そうだ! すまないが、一つだけ条件があってね。それが――」
「…………うっさいなあ」
「!」
まずい、と過ったのと、視界に影が落ちたのは同時。
しなやかな首筋に埋まった牙。ジワリと滲んだ血液が、球をつくって零れ落ち、歪な線を描いた。
ごくりと響いた嚥下音。
白の青年が"獲物"を放すと、黒の青年が崩れ落ちて膝をつく。
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