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「僕の謝罪は常に真面目なんだがね。それはさておき……今回は、僕には償い方がわからない」
「償い? ああ……彼のことは優秀な精神科医が治療に励んでくれるでしょうし、特別、上に謝罪は必要ないかと――」
「違うさ、巧人。僕が償いたいのは、キミだ」
俺を見上げる、痛まし気な双眸。そっと伸ばされた指先が、掠めるようにして俺の首筋に触れた。
「……こんな傷をつけるつもりはなかった」
引かれた充希の指先に、微量ながら血の紅。俺の血だ。首筋にナイフを押し当てた時に、切ってしまったのだろう。
そう気づいた途端、首筋がずきずきと痛みを訴え出してきたが、血が多少滲む程度の軽微な傷だ。
問題ない。清が何も言わなかったのが、何よりの証拠だ。
「ちょっと切っただけなんで、大したことないですよ。それに、俺が勝手にやったことです」
「だがそのきっかけを作ってしまったのは僕だ。他の誰もでもない、僕が巧人を傷モノにしてしまった。責任をとらせてもらいたい。僕は巧人になにをすればいい?」
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