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「……そうですね。誤解に誤解を重ねそうなので、出来ればその言い方を止めてもらえると助かります」
「誤解? 僕は事実を述べているまでだが?」
「わかりました。わかりましたから」
どうやら外では迎えが到着したようで、どこか好奇の混じった喧騒と共にスーツ姿の"仲間たち"がぞろぞろと入って来た。
正確には、自信を持って"仲間"と言えるのは、その中で指揮を執る女性隊員のみだ。
彼女は江宮奈美。余分の少ないスーツはバランス良い体躯を強調し、彼女が指示を飛ばす度に、後頭部で結い上げられた黒髪が揺れる。
ふと、彼女の双眸が俺達に向いた。途端に下がり気味の目尻にくっと力を入れ、
「その方たちは私が対応します。アナタは上階の方々の聞き取りをお願いします」
俺達に話しかけようとしていた若い隊員が、頭を下げて階段へと駆けていく。
江宮は静かな足取りで俺たちの眼前まで歩を進めると、俺の首筋に視線を留めて顔を顰めた。
「……傷」
「ああと、これは自分でやった傷ですから」
「……」
どこか不満げな表情をした彼女は、ちらりと目だけで充希を見た。
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