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彼女もきっと、どこか察していたに違いない。それでも、尋ねた。知ることを選択したのだ。
俺は団子を咀嚼してから、
「……どこまで話しますか?」
「……全て、知りたいです」
「……わかりました」
俺は栃内の体調を伺いながら、あの男が須崎の友人だったこと、その"突然死"を嘆くあまり、彼を"見殺しにした"俺を恨んで狙ってきたのだと話した。
栃内は、冷静だった。
俺が話し終えると、窓際のバーベナに視線を流して、
「あの男には、大切なものなんて何もないのだと思っていましたが……捨てていったんですね。自分を、愛してくれる人を」
彼女の声に怒りはない。
どこか噛み締める様な呟きに、充希が「結果としては、違いないがね」と静かに頷く。
「これは僕の仮説に過ぎないが、彼の場合は"置いていく"つもりはなかったのかもしれない。その身になにが起きようが、全ては変わらずそこに在るのだと……盲目的なまでに、信じていた。自身で意識することなく、自然と。なんとも幸福で、残酷なことだ」
だがまあ、と。
憂いだ瞳を伏せて、充希は口端を吊り上げた。
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